過労死ラインが20年ぶりの改定!改定された4つの項目とは?

この記事でわかること
  • 過労死の定義
  • 4つの改正ポイント
  • 過労死を未然に防止する対策

先月、20年ぶりに「過労死ライン」と呼ばれる脳・心臓疾患の労災認定基準の改定が行われました。今回の改正では、働き方の多様化や職場環境の変化が生じていることから、最新の医学的知見を踏まえて、「脳・心臓疾患」の労災認定基準が改定されました。

①過労死等の定義

過労死とは、過度な長時間労働や残業・業務における過重な負荷による脳・心臓疾患や、業務における強い精神的負荷による精神障害を原因とする、急激な体調悪化に伴う突然死やこれらの疾患のことです。

過労死等防止対策推進法第2条では、下記が過労死の定義として定められています。

・業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
・業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
・死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
過労死等防止対策推進法第二条
この法律において「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患 若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。

長時間および過重労働によって引き起こされる脳や心臓の疾患に基づくものと、過労やハラスメントなどによって精神疾患を発症するものの2つに大きく分類されています。

②4つの改正ポイント

1.長期間の過重業務で、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化

改正前】
発症前1か月に約100時間/発症前2か月間〜6か月間にわたって、1か月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合、過労死の可能性が強いと評価できると示していました。

【改正後】
上記に満たない場合も、これに近い時間外労働を行った場合は、「労働時間以外の負荷要因」を考慮し、業務との関係が強いと評価・労災認定できるようになりました。

2.長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因の見直し

下記の項目が新しく追加されました。

・休日のない連続勤務
・勤務間インターバルが短い勤務(終業から次の勤務の始業まで)
・事業場外における移動を伴う業務
・心理的負荷を伴う業務 ※内容の拡充
・身体的負荷を伴う業務

3.業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化

業務と発症との関連性が強いと判断できる場合として、以下のような例を示し、明確化しました。

4.対象疾病に「重篤な心不全」を追加

【改正前】
不整脈が一義的な原因となった心不全症状等は、対象疾病の「心停止(心臓性突然死を含む)」に含めて取り扱っていました。

【改正後】
心不全は心停止とは異なる病態のため、新たな対象疾病として「重篤な心不全」を追加しました。「重篤な心不全」には、不整脈によるものも含みます。

③過労死に伴う企業責任と防止対策

従業員が過労死した場合、労働基準法や安全配慮義務の違反で、刑事責任や民事責任を追究されて、裁判で多額の損害賠償を請求される可能性があります。役員などが個人の責任を取らされるケースも少なくありません。

また、過労死がおこる業務環境で労働をしている”ブラック企業”として、世間からのイメージも非常に悪くなってしまいます。

そんな過労死を防ぐために、厚生労働省の「過労死等防止に関する特設サイト」では、以下の6点を「企業でできる取り組み」として挙げています。

✔長時間労働の削減
従業員の労働時間を正確に把握し、時間外・休日労働協定(36協定)の内容を労働者に周知しましょう。また、週労働時間が60時間以上の労働者をなくすよう努めましょう。

✔職場におけるメンタルヘルス対策の推進
会社はメンタルヘルス対策を積極的に推進しましょう。厚生労働省が出している、「ストレスチェック実施プログラム(https://stresscheck.mhlw.go.jp/)」など無料で使用できるツールもあるので、労働環境の把握・整備に使用してもいいかもしれません。

✔過重労働による健康障害の防止
会社は労働者の健康づくりに向け積極的に支援することが必要です。 健康相談の体制整備や健康診断の実施・健康診断で異常があった従業員については、必要な措置について医師の意見を聴き、必要な事後措置を講じなければなりません。

✔職場のハラスメントの予防・解決
会社は、予防から再発防止に至るまでの一連の防止対策に取り組み、職場のハラスメントを防止しなければなりません。社内外に相談窓口の設置や、「ハラスメントをしない・させない」という企業の方針を今一度従業員に周知する必要があります。

✔働き方の見直し
会社はワーク・ライフ・バランスのとれた働き方ができる職場環境づくりを推進しましょう。従業員のワーク・ライフ・バランスへ気を配ることで、生産性の向上や良い人材が入社を希望するなど、企業側にも様々なメリットがあります。 会社と従業員で話し合って計画的な年次有給休暇の取得などに取り組みましょう。

✔相談体制の整備等
会社は労働者が自身の不調に気がついたら、すぐに専門家に相談できるよう相談な環境づくりを行う必要があります。社内外の相談窓口や、産業保健スタッフに相談ができる環境を整え、過労死等を未然に防止するよう努めましょう。明らかに様子のおかしいスタッフには、同僚・上司から相談にいくよう促すなど、従業員全体で健康管理を行うことが大切です。

まとめ

従業員が過労死した場合、企業イメージの悪化や損害賠償請求など、非常に大きな影響を与えてしまいます。
未然に防ぐことのできるように、日頃から労務管理をしっかり行いましょう。

重要度 : ★★★

参考:

過労死等防止に関する特設サイト
過重労働による健康障害を防ぐために
厚生労働省 脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました
過労死等防止対策推進法(参考資料)
厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム


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記事監修:井上啓文

特定社会保険労務士
関西大学経済学部卒業。会計ファームで税務・経営の指導を経験。
現在はIPO・M&A支援や人事労務に関するコンサルティングを担当。
豊富な知識と現場経験を活かした的確なアドバイスを得意とする。
経営者・従業員・役所の立場を勘案した柔軟かつ手厚い対応が高い評価を得ている。

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