副業・兼業とは?労務上の注意点やモデル就業規則を解説!

この記事でわかること
  • 政府の副業に対する考え方
  • 副業・兼業の労働時間管理
  • 副業・兼業の禁止について

副業・兼業の定義とは?

副業は、法律で定義付けられている言葉ではありません。

しかし、総務省が行う就業構造基本調査の用語解説では、「主な仕事以外に就いている仕事をいう」とされています。そのため、本業の他に従事している仕事は、全て副業となると理解しておけば問題ないでしょう。

一方の兼業も法律上の厳密な定義はなく、解釈は各自に委ねられます。
厚生労働省の作成した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」でも、両者を区別することなく、自社以外で従事する業務としています。

日本政府は副業・兼業を推進している

政府は、働き方改革実現に向けて副業・兼業を推進しています。
推進の理由は、労働者のキャリア形成や自己実現、収入の増加などがあげられます。

副業として、別の仕事に従事すれば、本業では得られない知識やスキルの獲得につながるでしょう。また、副業であれば離職の必要もないため、キャリアの断絶もありません。

現在の日本は少子高齢化の進展により労働力人口の減少が続いています。
そのため、どの企業であっても、人材確保が喫緊の課題です。副業や兼業は人手不足の解消にもつながるといえます。

平成30年には、厚生労働省のモデル就業規則から、遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」の規定が削除され、令和2年には副業・兼業に関する規定の更なる改定が行われています。

この規定の削除からも政府が副業・兼業を推進していることが読み取れます。

労務上の注意点①労働時間管理

労基法第38条第1項では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定しています。

そのため、労働者が副業・兼業を行っている場合には、原則として労働時間は通算しなければなりません。法定労働時間や時間外労働の上限規制は、本業と副業先の通算で考える必要があることに注意が必要です。

通算の結果、1週40時間、1日8時間を超える労働(法定外労働)に該当する場合、36協定による労働時間の延長や、割増賃金の支払いが必要です。

割増賃金の支払い義務

通算した労働時間により、残業時間分の割増賃金の支払いが必要となった場合には、後から労働契約を締結した企業に支払い義務が課されます。

契約の先後で決まるため、仮にA社で8時間労働し、B社で3時間労働した場合でもA社の労働契約締結が先であれば、B社に支払い義務が課されます。

労働時間の長短で決まるわけではないことに注意しましょう。

なぜこのようなことになるのか疑問に思うかも知れません。

これは、後から労働契約を締結する企業は、
既に別の企業で働いていることを確認したうえで、契約を締結すべきだと考えられているからです。

そのため、後の契約企業(副業先)に割増賃金を支払い義務が課されています。

ただし、通算した労働時間が法定労働時間を超過している認識がありながら延長を行った場合には、先の契約企業(本業)にも支払い義務が課されることがあるため、注意してください。

労務上の注意点②副業・兼業は禁止できるのか?

結論からいえば、企業が全面的に副業や兼業を禁止することはできません。
なぜなら、労働者には、憲法上職業選択の自由が保障されているため、公共の福祉に反しない限り自由に職業を選択可能だからです。
しかし、副業・兼業の禁止は、一律に認められないわけではありません。

禁止が認められる例
ガイドラインによると
以下のようなケースでは、副業・兼業禁止が認められるとされています。

・労務提供上の支障がある場合

・業務上の秘密が漏洩する場合

・競業により自社の利益が害される場合

・自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

競合他社の役員等に就任することは、
業務上知り得た機密を漏洩し、他社に利用される恐れがあります。

また、本業の終業後に深夜の長時間労働を行うような場合には、
疲労蓄積により本業への労務提供に支障が出る恐れがあるでしょう。

ただし、上記に該当するようなケースであっても、
禁止又は制限の妥当性は個別具体的に慎重な判断が必要です

禁止が認められる一方で、本業への支障がないにも関わらず、
再三のアルバイト許可申請を却下した企業に対して、損害賠償請求を命じた裁判例もあります。

ガイドラインでも就業時間以外は、労働者が自由に利用できる時間であり、
必要以上の制限を加えるべきではないとしています。
禁止が認められるのは、あくまで理由のある一定の場合に限定されることに留意しましょう。

副業・兼業可とする場合の就業規則の条文例

「原則、副業・兼業を認める方向で」とはいっても、副業に熱を入れすぎて業務に支障が出たり、長時間労働で体調を崩すようなことがあっては困ります。

また、企業秘密の漏洩の危険性がある場合は対策をとる必要があります。

このような場合は、就業規則において副業・兼業を原則可とした上で、禁止・制限する条件をあらかじめ盛り込んでおくと良いでしょう。

例:
(副業・兼業)
第65条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行う
ものとする。
3 第1項の業務が次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は
制限することができる。
① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合

参考資料:モデル就業規則の改定案(副業・兼業部分) – 厚生労働省

就業規則のモデルは厚生労働省から提示されておりますので、
副業・兼業の項目について自社の就業規則と比べてみてください。

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記事監修:井上 啓文

特定社会保険労務士
関西大学経済学部卒業。会計ファームで税務・経営の指導を経験。
現在はIPO・M&A支援や人事労務に関するコンサルティングを担当。
豊富な知識と現場経験を活かした的確なアドバイスを得意とする。
経営者・従業員・役所の立場を勘案した柔軟かつ手厚い対応が高い評価を得ている。

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